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2023.12.15

SaaS Engineering Meetup#3「SaaS × ソフトウェア資産計上」イベントレポート

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皆さんこんにちは!

SaaS Engineering Meetupの運営を担当している平田です。

今回の記事では、2023年10月27日(金)に開催された第3回 SaaS Engineering Meetupの当日の内容をご紹介していきます。

1. SaaS Engineering Meetupについて

「SaaS Engineering Meetup」とは、SaaSに特化したトピックを取り上げるミートアップ形式のイベントです。

SaaSを学ぶ機会を皆さんと共有し、SaaSの知見を広めるために様々な観点から企画・開催していく予定です。

・企画趣意書はこちら:https://note.com/y_ozasa/n/nc147f35bba26

2. 第3回「SaaS × ソフトウェア資産計上」概要

第3回「SaaS × ソフトウェア資産計上」では、ソフトウェア資産計上に詳しい3名のプロの方にSaaSとソフトウェア計上の基本やよくある悩みについて語っていただくトークイベントを開催しました。

  • ・開催日:2023年10月27日(金)12:00~13:00
  • ・登壇者:
  •   株式会社PinWheel 坂入翔一朗さん
  •   Uniforce株式会社  三澤進太郎さん
  •   Uniforce株式会社 加藤泰斗さん
  • ・申込数:88名
  • ・当日参加者:53名
  • ・満足度:78.5%(満足度アンケートの大変満足と満足の回答を合わせた%)

引き続き、多くの皆様にご参加いただきました。
また、参加者の皆様からご質問もたくさんいただき、非常に盛り上がった回となりました!

3. 当日のセッションの内容紹介

ここでは当日のセッションの内容を少しだけご紹介します。

セッション1:SaaSとソフトウェア資産計上について(株式会社PinWheel 坂入翔一朗さん)

セッション1では、株式会社PinWheel 代表取締役の坂入さんより、SaaS とソフトウェア計上の基本についてご紹介いただきました。

  • ・簿記のおさらい
  •   貸借対照表(BS)
  •     ソフトウェアは「資産」として計上
  •     VC等の投資家から出資を受けると純資産が増加
  •   損益計算書(PL)
  •     人件費は売上原価or販売費および一般管理費として計上
  •     販管費には様々な項目が含まれる(人件費、交際費、交通費、研究開発費)
  • ・ソフトウェア計上について
  •   ソフトウェアには以下の4つの目的があり、それぞれ計上の仕方が異なる
  •     研究開発目的
  •     受注制作目的
  •     市場販売目的
  •     自社利用目的
  • ・上場企業の具体例

セッション2:プロ4名によるパネルディスカッション

セッション2では会計のプロである、株式会社PinWheel 代表取締役の坂入さん、Uniforce株式会社 コンサルティング事業部 部長の三澤さん、同社コンサルティング事業部の加藤さんの3名によるパネルディスカッションを行いました。

パネルディスカッションでは、参加者様よりいただいたご質問にお答えいたしました。ここではその内容をご紹介します!(モデレーター:株式会社アンチパターン 小笹)

質問1:各社で償却期間が違うのはなぜですか?

坂入:自社利用のソフトウェアの場合、償却期間は5年間だが、会社によってはその期間を短くすることもあります。短くした場合のメリット等は加藤さんの方がご存じかもしれないので補足お願いします!

加藤:「SaaSがいつまでもつか(期間)」を考えて、例えば「将来的にこのシリーズは3年以内に閉じるかも…」という場合は期間を短くして償却することもあります。国際会計基準としても、そういう対応年数などに関しては会社でしっかり考えましょう、というルールになっています。

小笹:償却年数を短くした場合のメリットもしくはデメリットはなんでしょうか。

加藤:メリットは、会社の実態を適切に表現できることです。投資家との会話も進むんじゃないかと思います。デメリットとして、税務で考えると(5年を3年に変更するための)税務調整に対する事務コストが発生しますね。その辺のバランスを注視して決められると良いと思います。

質問2:日本国外だと日本より解釈のばらつきが少ないなどあったりしますか?

三澤:逆に国際会計基準の方がもっと自由(物毎に対応年数が変わってくる)なので、理論武装が必要ですね。日本の場合は税務に基づいて対応する企業が多いイメージです。

質問3:人件費、資産化の適切な割合などはあるか?人件費に対して資産化が大きいとなるのはどのくらいの割合になるか。また、資産化の割合が大きい場合のデメリット、リスクについて教えてほしい。

加藤:人件費として計上するものと資産化するものとで適切な割合についてのルールはありません。例えばエンジニアが3年後にリリースしたいSaaSの基礎研究を行っている場合は、具体的に資産性が明確ではないので研究開発費や給与で計上していく。一方で既にリリースしているSaaSの機能強化の場合、資産性が認められるのであればソフトウェアに計上します。つまり、エンジニアがどういう業務を行っているかによって、ソフトウェアなのか、給与なのか、研究開発費なのか…と考えていきます。

小笹:別でご質問いただいている「アジャイル開発における資産計上はどのように処理すればいいでしょうか?特に減価償却をどのように管理すればいいのか知りたいです。」にも重なる部分ですよね。開発の内容が資産性を帯びるものなのか保守なのか、研究開発なのかというのを、どこかの部門ないしは人が判断をするというプロセスが必要ということでしょうか。

加藤:そうですね。ロードマップ等に対しどの領域を機能開発しているか、その分類で大きく分かれてくると思っています。既存でリリースしているものの保守の場合、資産性はないので修繕費という扱いです。一方、機能強化の場合は資産性があるので…というふうに考えていくと良いと思います。

質問4:アジャイル開発において、特定の機能を切り出して、資産計上のために収益計画を立てることが難しいですよね

加藤:(企業バイネームで実例紹介)

小笹:アジャイル開発に関しては、特定の機能で切り出して計上することもできますが、プロダクト、事業、機能オプションという単位で計上することもできるということでしょうか。

加藤:事業モデルを鑑みて、どういう形でお金を取っていくのか(売上を立てるか)という点とセットで、どういう区分で計上していくかを検討するのが良いと思います。

坂入:計上するときは、結構各社で管理の仕方は変わってますよね。減損の場合はまとめて落とそう、という企業さんもいますね。ソフトウェア事業として落としているというか。

小笹:事業戦略に基づいた計上を行っているので、各社ばらつきがあるということですね。

質問5:ソフトウェア資産計上した際にバリュエーションが上がる場合はありますでしょうか?また、投資家にとってソフトウェア資産計上されている会社はポジティブ/ネガティブ、どのように映るのでしょうか?

小笹:バリュエーションが直接的に上がることはないと思うんですけど、見え方は変わりますよね。資産計上していきたいという事業会社側の思惑はあるんですかね。

三澤:そうですね。PLをどうやって見せたいかという点で5年間を考えた時に、毎回毎回1発費用計上…みたいな形でやってしまうと、利益が出ていないように見えてしまう。なので、利益が出ているように見せたいという思惑はあると思います。説明の仕方にもよるかなと思います。

坂入:少しだけ補足すると、上場するときの株価はレンジで出すので、直接的に多く資産計上したから得があるというわけではないかなと思います。少し前だと、正直トップラインだけ伸ばしておけば評価されるという時代もあったので、時代時代によって変わっているとは思います。

小笹:非常に勉強になりました。会社の事業戦略や成長ストーリーに合わせて、どのように計上の仕方を選択していくのかが重要だということがわかりました。ありがとうございました!

<ご経歴>

・株式会社PinWheel 代表取締役 坂入翔一朗さん

公認会計士。EY新日本監査法人→富裕層向けコンサルティング/ベンチャーキャピタルファンドを経て、2023年3月に札幌で会社を創業。 会計・ファイナンス・ITを軸として、企業の課題を解決すると共に、北海道の地を活かした事業の展開を構想している。

・Uniforce株式会社 コンサルティング事業部 部長 三澤進太郎さん

2008年12月 太陽ASG有限責任監査法人(現:太陽有限責任監査法人)に入所。主に金融機関監査(銀行、信用金庫)、会社法監査、金商法監査、IPO準備支援を担当。IPO準備支援にて、上場申請書類の作成支援などの業務に従事。2020年2月 太陽有限責任監査法人 退社、2020年3月 三澤公認会計士事務所 開設、2020年8月Uniforce株式会社へ参画し、IPO準備のコンサル、BPO、Uniforce開発支援に従事。

・Uniforce株式会社 コンサルティング事業部 加藤泰斗さん

公認会計士。太陽監査法人にて、上場企業やIPO準備企業(ソフトウェア開発会社含む多種多様な業種の会社)の監査を担当し、Uniforceでは、設立後のスタートアップから上場準備/上場後の会社の会計コンサルを担当している。

4. 今後のイベントのお知らせ

SaaS Engineering Meetupでは今後もミートアップを企画・開催してまいります。

最後に今後予定されているイベントをご紹介いたします。気になるテーマがございましたら、ぜひご参加ください!

これからもSaaS Engineering Meetupを応援いただけると嬉しいです!

(connpassグループページ:https://saas-engineering-meetup.connpass.com/